ドストエフスキーの作品「カラマーゾフの兄弟」に「1本の葱」という話がある。グルーシェニカという女性が主人公のアリョーシャに話して聞かせるおとぎ話だ。
あるところに意地の悪い女が居て、亡くなった。女は亡くなるまでよいことをしなかったので、悪魔に火の海に投げ込まれた。その女を守っていた天使がかわいそうに思い、女がしたよい行いを探して、神様に報告をしようする。探したところ、女が一本の葱を野菜畑から抜いて乞食にやったことがあるのを思い出し、神様に伝えた。神様は「その葱を拾ってきて、女につかまらせて火の海から引っ張りあげなさい」と言う。天使はそのとおりに、女を引っ張りあげようとしたが、他の罪人たちも女にしがみついた。すると女は、「これはあなたたちの葱じゃない。私の葱だ」と言って、他の罪人たちを蹴り落とし始めた。そのとたん、葱はぷつんとちぎれて、女は再び火の海に落ち、その海は今日まで燃え続けている。
これは芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の”蜘蛛の糸”が”葱”になっていてストーリ-はほぼ同じだ。